はじめに -『水滸伝』とは-


『水滸伝』とは
 『水滸伝』は、『三国志演義』や『西遊記』と並び称される中国の代表的な古典小説です。作者は施耐庵(し・たいあん)あるいは羅貫中(ら・かんちゅう)と言われていますが、彼らについて詳しいことは分かっていません。『水滸伝』が編纂されたのは中国の明代、16世紀頃といわれています。日本にも江戸時代から輸入され、現代に至るまで様々な翻訳が作られてきました。もちろん現在の私たちにも読むことが出来ます。物語は、北宋末の宋江の乱を題材にしていますが、その内容のほとんどは、後世の人々によって作り上げられたフィクションです。

 『水滸伝』は、大衆の娯楽作品として語り次がれてきました。20世紀以降になると、時代にあわせて映画やドラマ、マンガやゲームなどの題材として取り上げられてきました。また一方で『水滸伝』は優れた文学作品でもあり、中国の白話(口語)小説の模範とされてきたほか、現在も様々な研究機関で研究が続けられています。また、中国共産党の毛沢東によって、思想書として取り上げられたこともあるなど、『水滸伝』は様々な顔を持っています。
 
『水滸伝』のあらすじ

 『水滸伝』の舞台は北宋末期の中国。物語は洪信という人物が、封印された108の魔王を世に解き放ってしまう場面から始まります。それから数十年後、108の魔王たちは、それぞれ多様な特徴を持った108人の好漢に生まれ変わり、宋国をさわがせます。最初は全土に散らばっている好漢たちですが、運命に導かれるように「梁山泊」という山寨に集結し、「替天行道(天に替わりて道を行う)」をスローガンに、悪漢たちや腐敗した政府高官を相手に戦い続ける・・・という痛快な物語です。好漢たちの拠点、梁山泊は四方を湖に囲まれた天然の要塞です。物語のタイトル「水滸(水のほとり)」はこれに由来します。詳しい内容については、ぜひ『水滸伝』を読んでお楽しみ下さい。
 
『水滸伝』ができるまで

 『水滸伝』は、北宋の末期に起こった農民起義「宋江の乱」を題材にして語られる物語です。宋江ら36人の盗賊たちが、淮南のあたりを中心に反乱を起こし、最後は海州の長官・張叔夜に敗れ降伏した、という記事が複数の歴史書に記述されています。ただ、その記述はあっさりとしたもので、宋江の人となりについて全く触れられていませんし、宋江以外の36人は、その姓名も伝わっていません。

 時代が、南宋、元初と移っていく間に、この宋江ら36人をモチーフにした英雄説話が民間で出来上がっていきました。南宋末、元初には、宋江ら36人の姓名と賛辞を綴った龔聖与(きょう・せいよ)の「宋江三十六人賛」や、説話集『大宋宣和遺事』といった書物が作られていきました。この「宋江三十六人賛」や『大宋宣和遺事』」に見られる36人の姓名は、『水滸伝』の天𦊆星36人の好漢の名に類似しています。また、「大宋宣和遺事」の説話の中には、「宋江怒って閻婆惜を殺す」や「楊志刀を売る」など、明らかに『水滸伝』の原型になっているものがあります。また、元の時代には雑劇という形で、好漢たちの個々の説話が作られていきます。次第に宋江の仲間たちは108人に膨れあがり、明代の初期から中期頃に、小説『水滸伝』としてまとめられました。

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