好漢紹介
嵌寶頭盔穩戴
磨銀鎧甲重披
素羅袍上繍花枝
獅蠻帶瓊瑤密砌
丈八蛇矛緊挺
霜花駿馬頻嘶
滿山都喚小張飛
豹子頭林冲便是てんゆうせい ひょうしとう りんちゅう
天雄星 豹子頭 林冲
東京の禁軍の槍棒教頭。豹のような頭、つぶらな眼、燕のおとがい、虎の鬚という容貌であだ名は豹子頭。身の丈八尺、登場時三十四、五歳。槍棒の達人で、戦場では一丈八尺の蛇矛を用いる。軍人の家柄で、亡き父は東京の提轄、妻・張氏の父もまた教頭であった。
ある時、東京の菜園で武芸を披露していた花和尚の魯智深と出会い意気投合して義兄弟の契りを結ぶ。その時、嶽廟へ参拝に訪れている妻が何者かにちょっかいを受けていると女中の錦児が知らせに来る。廟へ駆けつけた林冲は、妻を助けようと絡んでいた男との間に割ってはいる。その男は、林冲の上司に当たる太尉・高俅の養子の高衙内であった。この後、高衙内はなんとしても林冲の妻をものにしたいと策を巡らし、養父の高俅と謀って、武器の持ち込みを禁じてある白虎節堂に、林冲を帯刀させたままおびき寄せ、罪を着せてこれを捕らえさせた。
高俅は、林冲を処刑するよう開封府尹に圧力をかけるが、公正な孔目・孫定の裁きで、林冲は滄州へと流罪となる。配流の直前、林冲は妻の今後のことを思って離縁状を書き、誰か世話をしてくれる人のところへ嫁ぐよう諭すが、妻は気を失って倒れてしまう。高俅に買収されていた護送役人の董超と薛覇は、護送の旅の途中、熱湯で足を洗い棘だったわらじを履かせるなど、林冲を苦しめ続ける。野豬林という林の中で、董超と薛覇はついに林冲に手をかけようとするが、駆けつけた魯智深に阻止された。滄州では牢城へ着く前に、天下の好漢と交わるのを好む柴進の屋敷へ足を運ぶ。柴進は、林冲を厚くもてなし、牢城で便宜をはかってもらえるよう手紙をしたため銀子を持たせて林冲を送り出した。
滄州の牢城では、柴進の書状や賄賂が功を奏し最も軽い労役を与えられる。しかし、東京の高俅が放った魔の手が滄州へ及んでいた。高俅の手先・陸謙・富安と買収された監獄によって暗殺されかけたところを運良く逃れ、怒りに燃えて三人を斬り殺す。林冲は吹雪の中逃亡し、とある民家に身を寄せ、酒と食事を寄こすよう民に詰め寄って暴れる。林冲は泥酔したところで近隣の民に捕らえられて、ある屋敷へ連行される。林冲が連行された先は運良く柴進の屋敷であった。柴進は林冲を歓待し、事情を聞いて林冲に梁山泊の王倫のもとへ身を寄せるよう勧め、林冲は梁山泊への旅に出る。
梁山泊へとたどりついた林冲は、山賊の首領・王倫に仲間入りを願い出るが、王倫は自分よりも優れた人物が仲間になることをおそれ、林冲を体よく追い返そうとする。副首領の宋万・杜遷らによってなんとかとりなされ、林冲は投命の証として三日以内に人の首を取ってくることを命じられる。約束の最後の日、林冲は顔に青あざのある武芸者と遭遇しこれに打ちかかっていく。朴刀を振るって一進一退、三、四十合も斬り合ったところで王倫が割って入って争いを停めた。武芸者は、もと殿帥府制使の青面獣・楊志であった。王倫は、楊志を梁山泊の山寨に招いてもてなし、林冲と牽制させる目的で楊志を梁山泊へ引き留めようとするが、楊志の意志は硬く、梁山泊を離れて東京へ向かった。林冲は梁山泊への入山を認められ、王倫・杜遷・宋万に次いで第四の席に着く。
しばらく後、生辰綱を強奪し逃亡してきた東渓村の晁蓋一行が梁山泊へ身を寄せてくる。しかしまたしても首領の王倫は、体よく晁蓋らを追い返そうとする。王倫の狭量に愛想を尽かした林冲は、意を決して王倫を刺し殺し、晁蓋を新たな梁山泊の首領として迎え入れる。新たな体制の梁山泊で、林冲は晁蓋・呉用・公孫勝に次いで第四の席に着き、梁山泊の軍事の中核となる。その頃、東京の妻の様子を探らせたところ、既に自ら命を絶っていたことがわかった。
その後、祝家荘戦、高唐州戦、対呼延灼戦、華州戦、曽頭市戦、北京戦、凌州戦、東平府戦、東昌府戦など数々の戦に参戦。祝家荘の戦いでは第二隊を率いて出陣し、乱戦の中で追い詰められていた宋江を助けて敵将・扈三娘を生け捕った。また二度にわたって祝竜と渡り合い、一度目は決着がつかなかったものの、二度目の戦いでは見事に祝竜を撃退した。高唐州の戦いでは、先陣を切って戦い敵の統制官・于直を五合に至らぬうちに討ち取った。また一隊を率いて逃げる高唐州軍を追撃して打撃を与えた。対呼延灼戦では、先方の第二隊を率いて討って出て官軍の大将・呼延灼と五十合も渡り合う活躍を見せたが、敵による連還馬の猛攻の中、矢にあたり負傷してしまう。東京時代の知己の金鎗班師範・徐寧が梁山泊へ連れてこられると、仲間入りするように説得した。
華州戦では楊志と共に華州城を攻めた。第一次曽頭市戦では、一騎打ちで曽魁を退け、晁蓋と兵を分けて進軍するが、晁蓋が奇襲を受けて毒矢を受けてしまい、林冲は晁蓋を守って兵をとりまとめて撤退した。晁蓋が死ぬと呉用と共に、宋江に首領の座に着くように勧めた。第一次北京戦では、鄧飛・馬麟と共に後軍を率い、敵将・聞達の退路を断ちながら戦った。対関勝戦では、花栄と共に敵の副将・郝思文を相手取ってこれを敗走させた。第二次北京戦では花栄とともに馬麟と鄧飛を率いて北京城へ攻め入った。凌州戦では楊志と共に関勝の後詰めとして出陣した。東平府戦では、花栄と共に董平を相手取り、誘い出すためにわざと逃げ出した。東昌府戦では、鉄騎をひきいて妖術で混乱する張清を水中へ追い落とした。梁山泊での席次は第6位。騎兵軍五虎将のひとり。