百回本・百二十回本・七十回本とは?


3種類の『水滸伝』
 『水滸伝』の訳本の目次をめくってみると、「第一回 ・・・」「第二回 ・・・」というのが目にはいるかと思います。「回」というのは日本で言うと「・・章」とか「・・話」に相当し、『水滸伝』に限らず、中国古典の長編小説は、長い物語をいくつかの回に分けているものが多いのです。このような小説を「章回小説」といっています。

 たとえば四大奇書の『三国志演義』は全百二十回、『西遊記』は全百回です。さて『水滸伝』は、というと少し複雑で、大きく分けて「百回本」・「百二十回本」・「七十回本」の3種類があります。『水滸伝』は明代に大人気であったようで、いろいろな本屋が『水滸伝』を刊行しました。そのような中で、さまざまな種類の『水滸伝』が作られてきた結果、回数の異なる3種類の『水滸伝』が生まれたのです。
 
百回本
 現在までの研究で、まず全百回の『水滸伝』(百回本)が最初に作られたと考えられています。これが古いかたち=オリジナルに最も近い、ということで文学的な価値が高いと言えます。百回本のストーリーを大ざっぱに表すと、下のようになります。

 108人の好漢が梁山泊に集う(〜71回) → 遼国との戦い(〜90回) → 方臘軍との戦い(〜100回)
 
百二十回本
 『水滸伝』の販売競争の中で生まれてきたのが百二十回本です。これは明末の楊定見・袁無涯という人たちが、百回本の第90回と第91回の間に、田虎・王慶との戦い20回分のエピソードを挿入させて作った、新しいかたちの『水滸伝』です。百回本と区別するために『水滸全伝』と呼ばれることもあります。百二十回本のストーリーを大ざっぱに表すと、下のようになります。

 108人の好漢が梁山泊に集う(〜71回) → 遼国との戦い(〜90回) → 田虎との戦い(〜100回) → 王慶との戦い(〜110回) → 方臘軍との戦い(120回)
 
七十回本
 最後に作られたのが、明末清初の批評家・金聖歎が刊行した七十回本です。この本は、108人の好漢が梁山泊へ集う場面(第71回)までで物語を終わらせてしまい、小説として精彩を欠く第72回以降の文章を切り捨てて、それまでの第一回を「楔子」、第二回を第一回、第七十一回を第七十回として、全七十回に仕立て直したもので、この七十回本が清代以降の中国では大流行しました。

 108人の好漢が梁山泊に集う(〜70回)
 

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